こんにちは。 今回からは新シリーズ「野球選手のための休養(リカバリー)学」を全4回でお届けします。
いきなりですが、皆さんは「疲労」や「休養」と聞いて、どんな状態をイメージしますか?
「筋肉痛で体が痛い」 「体が鉛のように重い」
多くの人が、こうした「身体的な疲れ」を思い浮かべるのではないでしょうか。
もちろん、体を休めて筋肉を回復させることは非常に重要です。
しかし、野球というスポーツにおいて、実はもう一つ、見落としてはいけない「疲れ」が存在します。
それが「脳・神経の疲れ(中枢性疲労)」です。
今回は第1回目として、なぜ「休養」が重要なのか?
身体の疲れだけでなく、科学的根拠に基づいた「2種類の疲労」について解説します。
上を目指す選手なら最低限押さえておきたい土台となるお話です。
「休んでいる間」にしか体は成長しない
まず、トレーニングの大原則を確認しましょう。
「人間は、休んでいる間に成長する」
練習中、体の中では筋肉が微細に損傷し、エネルギーが使われ、言わば「破壊」が進んでいます。
その後、食事を摂って睡眠をとる。この「休養」の時間に、体は壊れた部分を修復し、以前より強くしようとします(超回復)。
つまり、こういうことです。
- 練習=刺激(破壊)
- 休養=成長(修復)
もし、休養をおろそかにして練習し続けたらどうなるか?
「破壊」ばかりが積み重なり、修復が追いつかず、パフォーマンスは低下し、最終的には怪我に繋がります。
「休養」というパーツがあって初めて、練習は「成長」に変わるのです。
「体は元気だけど打てない」の正体
「今日は筋肉痛もないし、体は元気なはずなのに、なぜかバットが出てこない」
「判断が一瞬遅れる」
そんな経験はありませんか?
これこそが、先ほどお伝えした「もう一つの疲労」の正体です。
野球選手の疲労は、大きく2つに分けられます。
① 末梢性疲労(身体の疲れ)
皆さんがイメージする一般的な疲れです。
筋肉そのものやエネルギー切れによる疲労です。
- 特徴: 筋肉痛や体の重だるさとして自覚しやすい。
- 回復: 栄養補給と血流促進で、比較的スムーズに回復する。
② 中枢性疲労(脳・神経の疲れ)
こちらは「脳」から筋肉へ送る命令(神経伝達)が弱くなっている状態です。
- 特徴: 自覚しにくい。「集中力が続かない」「反応が遅れる」といった形で現れる。
- 回復: 体の疲れよりも回復に時間がかかり、完全に抜けるまで48〜72時間かかることもある。
野球は、一瞬の判断で体を動かす「脳のスポーツ」です。
体が元気でも、司令塔である「脳」が疲れていれば、本来のパフォーマンスは発揮できません。
「身体」と「脳」、この両方を回復させることが、正しい休養の第一歩です。
このシリーズで目指すのは「当たり前の基準」を上げること
この休養編でお伝えするのは、プロだけが実践するような特別な魔法ではなく、「これだけやっておけば、とりあえず及第点」と言える、怪我なく長く野球を続けるための基礎知識です。
これまでの「休養=何もしない(サボり)」という考え方を捨て、 「次の練習のために、意図的に体を回復させる」 という意識を持つことから始めていきましょう。
このシリーズでは、以下のステップで解説していきます。
今後のロードマップ:ステップアップとしての「休養学」
以前お伝えした「栄養学シリーズ」からのステップアップとして構成しています。以下の流れで進めていきます。
- 【【第2回】栄養と水分補給(知識の肉付け): 「栄養学は以前のシリーズでやったじゃないか」と思う方もいるかもしれません。 その通りです。以前お伝えした「栄養ロードマップ」で解説した、エネルギーやタンパク質の「絶対量の確保」がベースであることに変わりはありません。 前回のシリーズでは、いきなりあれもこれも詰め込むと難しくなってしまうため、あえて触れなかった部分があります。それが「タイミング」と「水分補給」です。 今回は、基礎ができている前提で、より効果を高めるための知識を「肉付け」していきます。
- 【第3回】睡眠の科学: 「寝る子は育つ」は科学的に正しかった。怪我のリスクを減らすための睡眠の考え方。
- 【第4回】スケジュール管理: 毎日練習したい気持ちと、休まなければいけない体。このジレンマを解消するためスケジュール管理方法を学び、「トレーニング編」へと繋げていきます。
まとめ
一生懸命やる選手ほど、休むことに不安を感じるものです。 でも、その真面目さが仇となって、見えない疲労(脳の疲れ)を溜め込み、怪我をしてしまっては元も子もありません。
「楽をするため」ではなく、「明日、より良い練習をするため」に休む。 まずはこの意識を持つだけで、野球への取り組み方が変わるはずです。
次回は、食事のステップアップ編【第2回:タイミングと水分補給】についてお話しします。 基礎の栄養学に、少しだけ新しい知識を足していきましょう。
成長(Grow)するために行動(Activity)を起こしていきましょう。―Grovity Baseball―



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