18 筋力トレーニングを1年間でどうプログラムするか

まずはここから!育成ロードマップ

前回の記事では、野球選手が目指すべき「ウエイトトレーニングの数値目標(上限)」についてお話ししました。

​今回はその続きとして、「じゃあ、そのトレーニングを1年間(シーズン)の中でどういうスケジュールで組み込んでいけばいいの?」という疑問にお答えします。

​ただ闇雲に筋トレをするのではなく、時期に合わせてトレーニングの目的を変えていく計画を、スポーツ科学では「ピリオダイゼーション(期分け)」と呼びます。

​今回は、基本となる王道の考え方と、成長期のアマチュア選手に絶対に知っておいてほしい「シーズン中のトレーニングの真実」について、最新のスポーツ科学の知見を交えて解説していきます!

  • ​試合期に入ると、ウエイトトレーニングをどう続ければいいか迷う
  • ​目の前の試合を大事にしつつも、長期的な成長も追いかけたい
  • ​選手を長期的に大きく成長させたい

​このような悩みを持つ方にとってはヒントになる内容になっていると思います。

​基本の王道:「リニア・ピリオダイゼーション」

年間計画を立てる際、プロ野球や一般的なスポーツ界で広く認知されているのが「リニア(直線型)・ピリオダイゼーション」と呼ばれる王道のアプローチです。

野球に必要な「パワー」をつけるために、以下の順番でステップを踏みます。

  1. 筋肥大期(11月〜12月): まずはエンジンを大きくするために筋肉の横断面積を増やす。
  2. 最大筋力期(1月): 大きくした筋肉を使って、扱える「最大重量(MAX)」を伸ばす。
  3. 瞬発・パワー期(2月〜3月): 培った筋力を「スピード」に乗せ、実際の野球の動作に近い爆発的な力へと変換する。
  4. インシーズン・維持期(3月以降〜): 試合期に入り、獲得したフィジカルを維持(キープ)しながらスキル練習に特化する。 ​ この流れはスポーツ生理学の基礎に忠実であり、対外試合が禁止される高校野球のオフシーズンにも完璧に合致する「大正解」のサイクルです。1年間を通して試合に出続けるプロ野球選手であれば、このスケジュールがベストでしょう。

【補足】もしシーズン中に「維持(キープ)」をするなら?

日本の野球界には「シーズン中は疲労を溜めないために、軽い重量で回数をこなす(軽く速く動かす)べきだ」という誤解があります。

しかし、スポーツ科学における筋力維持の絶対原則は「高強度(重い重量)かつ 低ボリューム(少ないセット数と回数)」です。疲労の最大の原因は「重さ」ではなく「回数」だからです。

もし維持期を設ける場合は、「冬に扱っていた重い重量を維持したまま、2〜3回を1〜2セットだけ行う」のが正解です。

これにより、疲労を残さずに神経系への刺激(筋力)をキープできます。

筆者の提案:アマチュアは「年複数回」サイクルを回せ!

さて、基本の王道と正しい維持の方法をお伝えしましたが、ここからが本題(私の提案)です。

​プロのように1年間戦い続けるならともかく、高校生や大学生など「まだまだ伸びしろがある成長期の選手」にとって、1年のうちの9ヶ月間(3月〜10月)を「現状維持」に費やしてしまうのは、非常にもったいないと私は考えています。

​だからこそ、私は「シーズン中であっても、維持に逃げず【①肥大 ➡️ ②筋力 ➡️ ③瞬発】のサイクルを年に2回〜3回まわす」ことを強くおすすめします。

実はこの考え方、近年のスポーツ科学の世界では「ブロック・ピリオダイゼーション」と呼ばれる非常に先進的で強力なアプローチとして高く評価されています。

野球のように「春」「夏」「秋」と複数回ピークを持っていく必要がある競技において、年に1回しか筋力を底上げするチャンスがないのは、選手の成長機会の大きな損失だと思います。

​目の前の1戦(試合)はもちろん大事ですが、目先の結果だけに囚われず、シーズン中にもあえて「フィジカルの土台を作る期間(4〜6週間など)」を意図的に設けることが、長期的なパフォーマンス向上(エリート育成の鉄則)に繋げることは検討しても良いのではないでしょうか。

想像してみて!「3年後」に起きる圧倒的な逆転現象

​シーズン中にもトレーニングのサイクルを回し続ければ、当然「コンディションが100%ベストではない状態(少々の疲労がある状態)」で試合に臨む日も出てくるでしょう。

しかし、「ベストではないコンディションの中で、どう工夫して戦うか」を学ぶのも、非常に重要な試合経験の1つだと私は思っています。

毎回100%の状態でしか戦えない選手は、トーナメントなどの連戦時に調子が上がらないとそのまま何も出来ずに終わってしまうという脆さの要因にもなるのではないでしょうか。

そして何より、少し想像してみてください。

もしこの取り組みを例えば3年間やり遂げたら、「シーズン中は維持(キープ)」だけをしてきた選手との間にはそれなりにフィジカルの差が生まれると思いませんか?

​そしてこのフィジカルの差というものは簡単に埋まるものではありません。

技術の差も簡単に埋まるものではないのかもしれませんが、フィジカルと比べて技術は「コツやきっかけを掴む」ことで爆発的に伸びる部分であり、フィジカル(筋力以外も含む)がないとそもそも習得できなかったりするものも存在しうるというのが私の認識です。

最初の1年目は、疲労もあって目に見える結果が出ないかもしれません。でも、2年目、3年目には、この地道な土台作りが必ず「大きな逆転現象」を起こすと、私は強く信じています!

まとめ:大きく成長するための土台作りを

  1. ​基本のサイクルは「①筋肥大 ➡️ ②筋力向上 ➡️ ③瞬発・パワー」。
  2. ​もし維持期を設けるなら「軽い重量でたくさん」ではなく「重い重量で少なく」が鉄則。
  3. ​アマチュアはシーズン中もサイクルを年2〜3回まわす「ブロック・ピリオダイゼーション」がおすすめ!

長期的な視点で見れば、必ず圧倒的なフィジカルの差(逆転現象)が生まれるとおもいます。

​ もちろん、目の前の試合に勝つためのスキル練習や調整も大切です。 しかし、自分自身の「将来の大きな成長」を見据えたとき、維持に費やす時間を少しでも「土台作り」に投資してみてください。

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