​#16 ただムキムキになればいい訳ではない!?ウエイトトレーニングを始める前に知っておきたい「野球選手の筋トレ」5つの知識

まずはここから!育成ロードマップ

今回は、野球における「本格的なウエイトトレーニングの考え方」についてお話しします。

​前回の記事では、成長期における「年代別の筋力トレーニングのロードマップ」をお伝えしました。

今回は、高校生以降で骨の成長が落ち着いてきて、いよいよ本格的に重りを持ったウエイトトレーニングを開始する段階でのお話です。

​この時、どのようなことを意識してウエイトトレーニングを行うかが重要になります。

YouTubeなどで「胸を大きくする方法!」「足に効かせるスクワット!」といった動画を見て、見様見真似で取り組んでいる選手も多いのではないでしょうか。

​ここに大きな落とし穴があります。

​「筋肉が大きくなってムキムキになれば、打球が飛んで球が速くなる」と信じてトレーニングをした結果、身体は大きくなったのにプレーの動きは鈍くなり、球速も上がらない……。

いわゆる「使えない筋肉」になってしまう現象が、起こってしまう可能性もあるのです。

  • ​一生懸命ウエイトトレーニングをして身体は大きくなったのに、なぜかプレーに活きない…
  • ​これから本格的な筋トレを始めたいけれど、どんなメニューから手をつければいいのか分からない
  • ​動画を見様見真似でやっているけれど、本当にこれが野球の動きに繋がっているのか不安

​今回は、そんな悩みや疑問を抱えている選手や、「野球のための正しい筋トレについて分からない・知りたい」という方にとって、今後の成長の大きなヒントになる内容になっています。

​なぜ、「使えない筋肉」になってしまう現象が起きてしまうのか?

今回は、「ボディビルダー」と「野球選手」のトレーニングの決定的な違いを例に挙げながら、野球選手が本当に取り組むべきウエイトトレーニングの5つの絶対法則をお伝えします。

​目的の違い:「大きく綺麗に」か「速く強く」か

​まず大前提として、トレーニングの「目的」が全く違います。

​ボディビルダーの目的は、筋肉を「大きく、形よく、綺麗に見せること」です。

そのためには、特定の筋肉にピンポイントで負荷をかけるトレーニング(アイソレーション種目)が最適解となります。

​一方、野球選手の目的は「打球を遠くへ飛ばすこと」「ボールを速く投げること」「速く走ること」です。

筋肉を大きくすることは、あくまでその目的を達成するための「手段(要素の1つ)」に過ぎません。

​ボディビルダー向けのトレーニングをそのまま野球に取り入れてしまうと、特定の筋肉だけが不自然に肥大化し、全身の連動性が破壊された「実際のスポーツの動きには活かされない筋肉」になってしまう危険性があります。

​では、野球選手はどう鍛えるべきなのか?以下の法則を理解してください。

​目指す頂点は「筋パワー(瞬発力)」である

​野球のパフォーマンスに直結するのは、単なる筋肉の大きさでも、重いものを持ち上げる力でもありません。「筋パワー」と呼ばれる要素です。

​筋パワーとは、簡単に言えば「スピード × 筋力(瞬発力)」のことです。

​例えば、50kgのバーベルを「ギリギリゆっくりと1回持ち上げられる人」と、「一瞬で素早く持ち上げられる人」がいたとします。

両者とも「50kgを上げる筋力」は同じですが、「筋パワー」が高いのは圧倒的に後者です。そして、実際の野球のプレーで必要になるのは、この素早く力を発揮する能力です。

​ただし、筋パワーを発揮するためには「順番」があります。

  1. 筋肥大(筋肉を大きくする): まずはベースとなる筋肉の器を大きくする。
  2. 筋力向上(重いものを扱えるようにする): 40kgしか上がらなかったものを、50kg上げられるようにする。
  3. 筋パワー向上(それを速く動かす): 50kgを「素早く」上げられるようにする。

​最終的なゴールは「筋パワー」ですが、そもそも50kgを1回も上げられない人は、50kgを速く動かすことはできません。

だからこそ、土台作りとして「筋肉を大きくして、重いものを上げられるようにする」プロセスが必要になるのです。

​「ボトルネック(弱点)」を解消せよ

​「全身をまんべんなく鍛えればいい」「自分の得意な種目(強い部分)をどんどん伸ばそう」

これもよくある間違いです。野球選手のトレーニングの基本は「ボトルネック(弱点)の解消」です。

​上半身の筋力が「100」あっても、下半身の筋力が「70」しかなければ、全身が連動して発揮できる最大のパワーは、一番弱い「70」になってしまいます。

​この状態で上半身ばかりを鍛えて「120」や「130」にしても、下半身が「70」のままなら、パフォーマンスは一切向上しません。

それどころか、強すぎる上半身の力に弱い下半身が耐えきれず、バランスが崩れて怪我に直結します。

​まずは自分の身体の「弱いところ(ボトルネック)」を見つけ出し、そこを徹底的に鍛えてベースアップを図ることが、パフォーマンス向上の最短ルートなのです。

​「効かせる」のではなく「連動させる」

​これが、ボディビルダーと野球選手の最も決定的な違いです。

​ボディビルダーは、例えば腕を鍛える時、「腕以外の筋肉(背中や足など)を一切使わずに、腕だけに重さを乗せて効かせる」という技術を使います。

​しかし野球選手は、その真逆を行かなければなりません。

「全身の筋肉を複合的に連動させて、重いものを『できるだけ軽く』持ち上げる技術」が必要です。

  • ベンチプレス: 胸や腕の力だけでなく、足の踏ん張り(レッグドライブ)や背中のアーチなど、全身を使って重さを押し上げる。
  • スクワット: 前ももや裏ももといった特定の部位に「効かせる」のではなく、腹圧(体幹)や足全体を連動させて重さを持ち上げる。

​特定の部位がキツくなるのではなく、「全身に負荷が分散して、スムーズに動作ができるか」を意識することが、そのまま「野球の動き(運動連鎖)」へと繋がっていきます。

​インナーマッスルは「低負荷・低速度」の絶対原則

​関節を安定させるために行う「インナーマッスル(回旋筋腱板)」の鍛え方も、一般的な筋トレとは完全に区別しなければなりません。

​インナーマッスルを鍛える際、硬すぎるチューブを思い切り引っ張ったり、重いダンベルを勢いよく振り回したりするのは目的に沿わないトレーニングメニューになります。

重い負荷や速い動きを行おうとすると、脳は即座に「小さなインナーマッスルでは対処できない」と判断し、無意識のうちに強力なアウターマッスル(体の表面の大きな筋肉)を優先して使ってしまうからです。

​これでは単なる「アウターマッスルの軽い筋トレ」になってしまい、目的の深層筋には全く刺激が入りません。

インナーマッスルは、代償動作が起きない(まずは500g〜1kg程度の)極めて軽い負荷を用い、ゆっくりとしたスピードで行うことが鉄則となります。

判断基準としては、身体の奥がジワーっと熱くなってくるような感じでトレーニングできていればインナーマッスルを意識したトレーニングになっていると言えるでしょう。

​さいごに

​ウエイトトレーニングは、正しい知識で行えばこれほど強力な武器はありません。

しかし、目的を間違えて「ボディビルダーの筋トレ」をしてしまうと、せっかくの努力が野球の技術向上に結びつかなくなってしまいます。

​まずは弱点(ボトルネック)を補い、筋肉を大きくし、やスタビライザー(インナーマッスル)を強化し、最終的にはジャンプやメディシンボール投げといった「全身のタイミングを合わせた瞬発系トレーニング(筋パワー)」へと繋げていく。この正しい順序をしっかりと認識しておいてください。

​次回は、この大原則を踏まえた上で「じゃあ具体的に、筋肉を大きくするプログラム(回数やセット数)と、筋パワーを上げるプログラムはどう違うのか?」という、実践的なメニューの組み方について解説していきます!

​今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。

​成長(Grow)するために行動(Activity)を起こしていきましょう。―Grovity Baseball―

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