データ時代に投手が生き残るために意識したい「ハズレ値」と、打者との決定的な違い
今回は、非常に学びの多かったYouTube動画(フルタの方程式より)をご紹介しながら、データ野球時代にピッチャーが生き残るための武器や、ピッチャーとバッターの決定的な「立ち位置の違い」についてお話しします。
『古田の方程式』から学ぶ、勝てるピッチャーのピッチデザイン
今回ご紹介するのは、元プロ野球選手・古田敦也さんのチャンネル『古田の方程式』で配信された「ピッチング編」の動画です。
野球のトレーニング施設の専門家の方と、古田さんが対談する形式になっています。
動画内では、近年主流となっている「出力の高いスピードボールを投げるための理論」や、自分の投球をどう組み立てるかという「ピッチデザイン」について詳しく解説されています。
この動画の素晴らしいところは、最新の理論に対して、名捕手として数々の投手を見てきた古田さんが「でも、実戦のここってどうなの?」と突っ込み、それに専門家が答えていくというスタイルです。
動画の結論としても語られていますが、スピードボールを投げることは打者の判断時間を奪うため間違いなく重要です。
しかし、最も大切なのは「いかに自分の武器を理解し、試合で打者を圧倒して勝てるピッチャーになるか」ということです。
そのために必要な球種やフォームの工夫を探していく「ピッチデザイン」の考え方が、非常に分かりやすく解説されています。
骨盤の着地した瞬間の角度やトップの位置、胸郭の柔軟性がなぜ大事なのかといった具体的なメカニズムも学べるので、ピッチャーや指導者の方は必見の動画です。
150km/hでも打たれる時代。あなたの「ハズレ値」は何か?
この動画を見て、私自身が実戦の感覚として強く共感し、重要だと感じたことが2つあります。
1つ目は、「ボリュームゾーンから外れた『ハズレ値(少数派)』のボールを武器にすることの重要性」です。
現在、レベルの高いステージになると150km/hを投げるピッチャーは珍しくなくなりました。
そのため周りに150km/hを投げるピッチャーがたくさんいる環境では、バッターの目が慣れてしまい、「ただの150km/h」として捉えられ、あっさり打たれてしまうことがあります。
そこで武器になるのが、他の大多数の選手とは違う「ハズレ値」です。
「なんだこの球は!」「こんな軌道、見たことがない!」とバッターに思わせる特殊なボールを持っていれば、それはとてつもない武器になります。
例えば、まだ流行っていない頃に広まったチェンジアップや、今でいえば落差の大きいカーブがそれに当たるでしょう。
多くの投手が当たり前のように投げるボールではなく、少数派のボールを持つピッチャーは実戦で強いのです。
データがなくても「ハズレ値」は見つけられる
近年はトラックマンなどの機器でボールの回転数や変化量を数値化できますが、そういった環境がない選手が大多数だと思います。では、どうやって自分の武器を見つけるのか?
それは、試合を通して「なぜか打たれないボール」を探し、追求することです。
一例として、私自身の実体験をお話しします。
私は試合でフォークボールを投げることがあります。しかし、感覚的にはツーシームやスプリットのように「ほんの少ししか落ちていない」ボールです。
それ単体で見れば恐らく空振りを取れる確率も低く、ただの打ちやすいボールに見えると思います。
実際にキャッチャーからも「あんまり落ちていない。(落差が小さい)」と言われるレベルです。
しかし、ストレートが綺麗に伸びている感覚の時にこの「落ちないフォーク」を投げると、バッターは面白いようにボールの上を振ってくれ、有効な球種となっています。
これは、バッターの目にはストレートと同じ軌道に見えているのに、実際は手元でわずかに違う動きをしているから起こる現象です。
フォーク単体としては優秀でなくても、ストレートと組み合わせることで「バッターがストレートだと思って振ってくれる」という強力な武器になります。
キャッチャーの反応や、自分が投げている感覚、そして実際のバッターの反応。そこから「このボールは効果的だ」と感じるものを中心にピッチデザインを構築していくことが、実戦で抑えるための近道になります。
データ(理論)と相性が良いのはピッチャー?陸上競技との類似点
2つ目に感じたのは、「ピッチャーとバッターの決定的な立ち位置の違い」です。
動画はピッチング編の前にバッティング編があったのですが、それぞれの動画での受け答えを見ていても感じたのが
ピッチャーの指導理論は、バッターの時よりも「なるほど、こうすればこうなるのか」と、ストンと腑に落ちて納得できる部分が多かったということでした。
これはなぜでしょうか。
私は、ピッチャーというポジションが非常に「主体的」であるからだと考えています。
ピッチャーは、マウンドの傾斜という決められた環境の中で、自分の身体と上手くコミュニケーションを取り、メカニズムが噛み合えば、理論上はどこまでもボールの質(急速や変化量)を成長させることができます。
「あと1km/h速く」「あと数cm変化させる」というように、記録を伸ばしていく「陸上競技」のようなものに近い側面があると感じます。
相手(バッター)の動きに合わせる必要がなく、フォームのタイミングも投げるボールも、すべて「自分主導」でデザインできるのです。
だからこそ、物理やデータといった「理論」をそのまま結果に結びつけやすいポジションだと言えます。
ピッチャーは「進化(理想)」を追求し、バッターは「対応(現実)」を磨く
ピッチャー編の動画でしたが、同時にバッターが重要視すべきではないかと考えさせられるきっかけにもなる動画かなと思いました。
ピッチャーが主体的に「ハズレ値」を追求し、どんどん打たれにくいボール(理想)を投げられるように進化していく。
対するバッターは、その進化し続ける未知のボールに対して、いかに瞬時にアジャストするかという「対応力(現実)」が求められます。
少し極端な話をすれば、ピッチャーが理論上完璧な「絶対に打てないアウトコースのスライダー」を100球連続で投げミスなくコントロールできたら、バッターは手も足も出ずに終わってしまいます。
しかし現実には、ピッチャーも人間ですから、必ず投げミス(失投)や甘く入る球があります。
現代の「長打を狙うバッティング理論」は、ピッチャーが意図した完璧なボールを打ち崩すというよりも、「ピッチャーが理想通りに投げきれなかった失投を、逃さず仕留めて長打にする」という前提が先行しているように私は感じています。
だからこそ、ピッチャーは理論上の限界をどんどん攻めて「良いボール(理想)」を追求していくべきですし、バッターは自分の理想のスイングレベルを上げつつも、どんなボールにも食らいつける「対応力」を磨くことが最も重要になるのです。
まとめ
- ピッチャーは、データや理論を追求し、自分だけの「ハズレ値」を創り出すこと(主体的)。
- バッターは、その進化するボールに対して柔軟にアジャストする「対応力」を磨くこと(受動的)。
この2つの立ち位置の違いを理解しておくと、日々の練習への取り組み方や、データとの向き合い方が大きく変わってくるはずです。
今回ご紹介した『古田の方程式』のピッチング編は、投手の皆さんの意識を変える素晴らしい内容になっていますので、ぜひ前回のバッティング編と合わせてご覧になってみてください。
バッティング編の動画と考察については別記事で書いていますのでそちらから覗いて見てください。
成長(Grow)するために行動(Activity)を起こしていきましょう。
―Grovity Baseball―




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