中学3年生の皆さん、そして保護者の皆様、長い受験勉強本当にお疲れ様でした。
受験勉強からも解放されて、いよいよ高校野球という次のステージへ向けて、身体の準備を再開する時期ですね。
高校入学までの3週間という短い期間ですが、その3週間を充実したものにしてほしいという思いから
高校野球のスタートダッシュで失敗しない為の3週間プログラム
をまとめました。
はじめに:3週間の方針について
ここで絶対に知っておかなければならない「現実」があります。
本格的なトレーニングを中断して学業に専念していた数カ月という期間は、筋肉量の減少だけでなく、毛細血管の低下や神経の伝達能力を著しく鈍らせる状態を引き起こしています。
野球における投球や打撃は、下半身で生み出したエネルギーを体幹、肩甲骨、そして腕から指先へと伝達する「キネティックチェーン(運動連鎖)」によって成り立っています。
関節の可動域や筋力が低下した状態でいきなり「全力プレー」を行えば、力の伝達ロスが生じ、それを補おうとして肩や肘の靭帯に過剰な負担が集中します。
これが、復帰直後に重大な怪我が多発する最大の原因です。
だからこそ、高校入学までの「3週間」で設定すべき最優先のゴールは、「全力でプレーできる状態にすること」ではなく、「怪我の予防」と「基礎体力の確実な回復」にすることを推奨します。
大前提のルール
まずトレーニングの具体的なステップに入る前に、安全に復帰するための絶対に守るべきルールをお伝えします。
運動歴に合わせたスタート
受験期間中の運動状況によって、スタート地点を変えましょう。
- 全く運動していなかった場合: 関節への負担を考慮し、後述する第1週(ストレッチ中心)から慎重に立ち上げます。
- ランニング等たまに運動していた場合: 第2週目の内容(自重トレーニング)を第1週目に前倒ししてスタートさせても問題ありません。
技術練習(投球・打撃)は並行してOK!ただし順番に注意!
長期間のブランクから復帰するためには、フィジカルトレーニングと技術練習を組み合わせることが推奨されますが以下の点に注意してもらいたいです。
- 順番の絶対ルール: 技術練習は必ず「フィジカルトレーニング(筋トレ)の前」に行ってください。筋トレで疲労した状態でボールを投げたり打ったりすると、フォームが崩れて関節へのストレスが激増します。
- 出力を抑える: キャッチボールは約13〜18mの距離から50%の出力で始めます。直線的な強いボールではなく、山なりの軌道で投げたり、ステップを使って下半身と上半身の連動を使って負担軽減につとめながらスタートしましょう。
筋肉痛時はトレーニングしないための分割法
全身のトレーニングを一気に再開すると広範囲に筋肉痛が発生します。
筋肉痛が残っている状態でのトレーニングは、筋肉の修復(超回復)を妨げ逆効果です。
そのため、日によって鍛える部位を細分化する「分割法」を取り入れることにしています。
「今日は上半身、明日は下半身、明後日は休み」というようにサイクルを回すことで、筋肉痛を避けながら効率よくトレーニングを進めることができます。
実践スケジュール
第1週:神経と関節の目覚め(モビリティの回復)
長期間の座りっぱなしで硬くなった関節の動きを取り戻し、休眠状態の中枢神経と筋肉の回路を繋ぎ直すフェーズです。
- 四つ這い・胸椎回旋ストレッチ(左右各10回×3〜5セット)
四つ這いになり、片手を後頭部に当てます。肘を天井に向けるように大きく胸を開いて体幹を捻ります。
受験期の長時間のデスクワークは「猫背(胸椎の後弯)」を定着させることとなり、これが肩甲骨の正常な動きを阻害し、肩の痛みを誘発します。
この種目で胸椎の伸展と回旋を引き出し、投球の「トップ」を作る土台を再構築します。
「痛みのない範囲で」「息を吐きながら」行います。息を止めると身体が緊張しますが、息を吐くことで筋肉の弛緩が促進されます。
第2週目以降もこのストレッチは必須となります。(パフォーマンス向上にもつながります。)
上のストレッチを必須として、個人的におすすめしたいのはヨガです。
無理なく、全身をバランスよくストレッチできてモビリティ回復に役立ちます。
オススメはB-FlowさんのYoutubeチャンネルです。
10分〜20分で取り組めるたり、動画数も多いので「この種目は自分にとって必要だ。」と感じられるものにも出会えると思います。
自身の身体と対話し、状態を確認するイメージで取り組んでみてもらいたいと思います。
第2週:解剖学的適応とキネティックチェーンの土台作り
関節が動くようになったら、筋肉や腱、靭帯の強度を高める「解剖学的適応」へと移行します。
重いものを持ち上げるのではなく、「15回こなせる負荷」で基礎を作ります。
ここで分割法「A:技術練習+上半身」「B:下半身+ラン」を取り入れていきます。
「Aの日→Bの日→回復日→Aの日・・・」というようにサイクルを回していきます。
回復日にはウォーキングをしたり、1週目で紹介したヨガをしたりして回復速度を早めるように促します。(アクティブレスト)
筋力トレーニングの具体的メニュー例は以下にまとめているので参考にしてください。(各メニューについては検索をかければすぐに出てくるので調べてもらいたいと思います。)
【ワークアウトA(上半身・投球・打撃のブレーキ強化)】
- チューブや軽量ダンベルでの肩・肩甲骨ケア(各15回×2セット):エクスターナルローテーション(外旋)、リアレイズ(肩関節水平外転)、サイドレイズを行います。これらは投球の減速期(フォロースルー)において、腕が前へすっぽ抜けるのを防ぐ「上半身のブレーキ」として働き、肩甲骨周辺の安定性を向上させます。ダンベルやチューブがなければ1kg程度のペットボトルで代用できます。
- プッシュアップ/腕立て伏せ(15回×2〜3セット)
- ネットスロー または 50%のキャッチボール: 至近距離でのネットスロー(またはタオルシャドー)は相手までの距離がないため「遠くまで届かせよう」という無意識の力み(オーバーエフォート)が排除され、純粋なフォームの修正や指先の感覚にのみ集中できます。
- 50%の素振り・置きティー
【ワークアウトB(下半身・走塁のブレーキ強化)】
- フロントランジ(左右各15回×2〜3セット):前後方向の減速機能を担う「殿筋群とハムストリングス」を強化します。ダッシュからのストップや、踏み込んだ時の強力な衝撃を吸収する最重要のブレーキとなり、肉離れを防ぎます。
- スクワット(15回×2〜3セット): 下半身全体の基礎筋力回復。
- サイドランジ(左右各15回×2〜3セット): 横方向の安定性を担う「内転筋群」を強化します。内野守備の切り返しや、打撃の体重移動でブレない「壁」を作ります。
- 50%の塁間ダッシュ&ストップ動作: 塁間程度を50%で走り、「数歩走ってピタッと止まる」減速ドリルを行います。
第3週:実践への移行
回復した筋力を、実際の野球特有の動作に結びつけていく競技移行期です。
塁間(約27.4m)のダッシュを全力の70〜80%で反復するインターバルトレーニング等(ダッシュ→歩いて戻る→戻り次第ダッシュ→歩いて戻る・・・)を導入します。
第2週目の筋力トレーニングや技術練習についても、練習翌日に違和感や筋肉痛がないような状態であれば60%→70%と次回の練習日に出力を上げていきます。
雨の日でも取り組める練習メニュー
回復日や雨の日用のメニュー例をいくつか挙げますので参考にしてください。
- 室内サーキットで体力維持: ストレッチやランジに続けて、「マウンテンクライマー」等を(30秒動いて30秒休む×5セット)行い、心肺機能の維持向上を図ります。
- ビジョントレーニング(見る力の強化): 数字を書いたボールを投げてもらい、キャッチ時に読み上げる練習で動体視力を養います。
- 感覚と手首の強化: 室内でボールを転がして握りを確認したり、仰向けで天井にボールを投げたりして、ボールと触れる感覚を呼び起こします。このとき、数字を書いたボールを複数用意してランダムで手に取って行うとビジョントレーニングも並行できます。
- フォーム分析: 自撮り動画をプロのお手本と比較し、客観的な動作確認を行います。
- 野球脳のトレーニング(野球ノート): 目標とする選手像や日々の振り返りを言語化し、思考力を養います。野球に関係なくても読書も思考力を養う一助となると思います。
- 勉強:せっかく受験勉強で習慣となった勉強を手放すのはもったいないというのもありますが、勉強の習慣が続いていれば、高校生活に入ってからも勉強のせいで野球が制限されるという事態を避けられる可能性は上がります。意外と野球に集中するためにも馬鹿にできない要素かもしれません。
入学前に「絶対にやってはいけない」練習とは?
いきなり100%のダッシュは絶対NG!
筋肉が引き伸ばされながら収縮するダッシュは、肉離れのリスクが極めて高い動作です。全力プレーへの移行は以下の基準で慎重に行います。
- 機能的テスト: 片足スクワットやジャンプ着地時に、太もも裏やふくらはぎに違和感がないか。
- 段階的スピードアップ: いきなり100%は厳禁。まずは50%のジョグから始め、痛みがなければ翌日以降に70%、90%と徐々に出力を上げます。常に「痛みや張りが全くない」ことが次の強度へ進む絶対条件です。
瞬発系種目(プライオメトリクス)はまだ「厳禁」
ジャンプトレーニング(ボックスジャンプ等)やメディシンボール投げといった瞬発系種目は、筋肉や腱に急激な伸張反射(SSC:ストレッチ・ショートニング・サイクル)を強いるため、ブランク明けの組織には負担が大きすぎます。
これらの種目は「100%の全力ダッシュが痛みなく可能になった後」あるいは「高校入学後の本格的な練習合流時」から導入するという認識構いません。
今はその土台となる基礎筋力と減速機能の再構築に専念しましょう。
さいごに:一生モノのケア習慣を身につける
この3週間で最も習得してほしいのは、自らの身体を客観的に観察し、状態を感じ取り、疲労を管理する術です。
2週目以降は回復日にも何かしらのアクションを入れるスケジュールとしていますが、自身の疲労や筋肉痛が取れないなどのサインを大事にして、完全休養日を取り入れるなど工夫してもらいたいです。
自身の身体と対話を行うことを意識して3週間過ごすことができれば、単なる「身体の動きを取り戻す期間」だけではなく、疲労感や身体の変化(良い変化も悪い変化)を感じられる能力が身につくことにもつながります。
これは高校野球生活において、自分自身を怪我から守り抜くための危機察知能力であったり、成長のきっかけを掴むアンテナに繋がる能力です。
怪我に悩まされることもなく、成長の土台をつくって最高のスタートダッシュを切るためにも、焦らず自分自身の身体の状態をみながら積み重ねる3週間にしてもらい、希望をもって4月を迎えてもらいたいと思います。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。
成長(Grow)するために行動(Activity)を起こしていきましょう。―Grovity Baseball―



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