今回は、「バッティングの理想と現実」というテーマでお話しします。
現代の野球界は、データ分析が非常に進んでいます。
「こういう軌道でバットを出せば打球が飛ぶ」
「こういうスイングが物理的に最もホームランになりやすい」
といった理想のスイングが可視化され、多くの選手がそれを目指してトレーニングに励んでいる傾向にあると思います。
また、「少々打率が悪くても、長打(ホームラン)を打てるバッターの方がチームへの得点貢献度が高い」というデータも広く認知されるようになりました。
それ自体は素晴らしいことですし、バッターである以上、最高の華である「ホームラン」を求める姿勢に何の異論もありません。
しかし、ここで一つ、私がこれは絶対に忘れてはならないのではないかと思う視点があります。
それは「物理的に理想のスイングができる能力」と、「実際の試合でそのスイングを『させてもらえるか』どうかは全く別問題である」ということです。
- 練習やフリーバッティングでは理想の打球が飛ぶのに、いざ試合になると全然打てない…
- スイングの形やスイングスピードは良くなっているはずなのに、なぜか結果に結びつかない
- 最近よく耳にする『〇〇理論』や『フライボール革命』といったデータ野球に、なんだか違和感やモヤモヤを感じている
今回は、そんな悩みや疑問を抱えている選手にとって、解決になるヒント内容になればと思います。
ピッチャーの仕事は「理想のスイングをさせないこと」
実戦における最大の壁は、相手ピッチャーの存在です。
大前提としてバッターというのは、ピッチャーが投げてきた球に対して「受け身(対応させられる立ち位置)」からスタートします。
そして、ピッチャーは基本的にバッターが最も嫌がるコースやタイミングを突き、いかに「理想のスイングをさせないか」を考えてボールを投げてきます。
そのため、バッターは自分が待っていない厳しいコースに来た球や、タイミングを外してくる変化球に対して、いかに瞬時に身体を反応させてバットに当てる(コンタクトする)ことができるか。
この、どんな球にも柔軟にスイングを適用させる「対応力(アジャストする力)」が実戦においては重要であると私は考えています。
データに基づいた「遠くへ飛ばすための綺麗なスイング」だけを追い求め、この「対応力(アジャストする力)」の視点がすっぽり抜けていると、どうなるでしょうか。
自分が打ちやすいと感じるピッチャー(球速が遅い、変化球のキレがない)からは特大のホームランを打てるかもしれません。
しかし、ステージが上がり、レベルの高いピッチャーと対戦した途端、全く歯が立たなくなってくると思います。
ストライクゾーンの厳しいコースや、タイミングを外す変化球に対して、自分の理想のスイングをさせてもらえず、結果として極端に成績が落ちてしまうのです。
これが、練習(フリーバッティング)では誰よりも打てるのに、試合になると結果が出ない大きな原因にもなると思います。
私はバッターの基本は、相手が投げてくるボールに「対応」することだと考えています。
ピッチャーの失投(甘い球)を逃さず仕留めて長打にする力は当然必要ですが、それと同時に、ピッチャーが打ち取ろうと投げてきた厳しいボール(想定外のコースや変化球)に対して、いかにコンタクト(対応)できるかが問われます。
【打球を遠くへ飛ばす力(スイングの理想)】 × 【どんな球にもアジャストする力(対応力)】
この2つの掛け合わせがあって初めて、実戦で結果を残せるバッターになれると思います。
近年はデータ重視の流れから、この「対応力」をおろそかにしがちな傾向があるように感じており、そこは絶対に忘れてほしくないという想いがあります。
『古田の方程式』から学ぶ、データと実戦の狭間
この「理想と現実」について、面白く観て考えさせられるYouTube動画があります。
元プロ野球選手・古田敦也さんのチャンネル『古田の方程式』で、最新のデータや身体の仕組みに基づいてバッティング指導を行う専門家の先生との対談動画です。
この動画の面白いところは、「数値化された最新のバッティング理論(理想)」を提示する専門家の先生に対し、プロの第一線で数々のピッチャーと対戦してきた古田さんが「でも、実戦のこういう場面ではどうなの?」と、実戦感覚(現実)に基づく鋭い疑問を投げかけるという構図になっている点です。
動画を見ると、打球を強くするためのメカニズムなどはとても勉強になります。
しかし一方で、古田さんの「実戦ではそうはいかないよね」という問いに対し、専門家の方も「確かにそういう場面(対応を迫られる場面)はあります」と答えており、理想と現実の両方を踏まえた完全な「正解」は出しきれていないように感じる場面もあります。
(※動画内では、西武の中村剛也選手のように「三振が多くても常に自分の理想のスイングを貫く」ことが許される特殊な起用法・役割の選手も例に挙げられていますが、全員がそのスタイルで生き残れるわけではありません。)
数値化できない「選手としての厚み」
この対談動画を見て私が感じたのは、「野球には、まだ数値化できていない(データに表れない)けれど、実戦において極めて重要な部分が存在するのではないか」ということです。
データで可視化された目標に向かって努力することは合理的で素晴らしいことです。
しかし、数字だけを追いかけ、数字に表れない「実戦での感覚」や「対応力」を無視して野球をやってしまうと、どこか「薄っぺらい選手」になってしまう危険性があります。
- どんな状況でも何とかしてくれそうという「粘り強さ」
- ここぞという場面で打席に立ってほしい「信頼感」
- 誰かの真似ではなく、自分なりのスタイルを確立した「職人性(独自性)」
こうした「選手としての厚み」は、理想のスイングの追求だけでは生まれないのではと思います。
データ(理想)を取り入れつつも、実戦(現実)で自分がどうピッチャーと向き合い、どう折り合いをつけていくのか。その葛藤と工夫の先にこそ、「〇〇のようなバッター」ではなく「自分というバッターのスタイル」が確立されるのだと思います。
皆さんもぜひ動画を見て、「スイングの理想」と「実戦での対応」について、自分なりの答えを考えてみてください。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。
成長(Grow)するために行動(Activity)を起こしていきましょう。―Grovity Baseball―



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