【投手必見】イメージトレーニングはただの「妄想」ではない。脳と筋肉をつなぐ科学的根拠と実践法

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​「いいイメージを持って投げろ」

「理想のフォームを頭に描け」

​野球の指導現場において、イメージトレーニング(メンタルトレーニング)は昔から当たり前のように行われてきました。

しかし、選手の中には「結局はただの想像でしょ?」「実際に体を動かさないと意味がないのでは?」と、その効果に半信半疑な人もいるかもしれません。

​実は近年、「投球動作をイメージするだけで、脳から筋肉への指令が活発になる」ということが、科学的な研究によって明らかになってきました。

​今回は、最新の論文(2026年1月20日)を紐解きながら、イメージトレーニングがなぜ投手に必要なのか、そして「ノースロー調整」や「スランプ脱出」にどう活かすべきかについて、Grovity Baseballの視点で考察します。

​論文紹介:投球イメージは「指先」にまで届く

​今回ご紹介するのは、以下の論文です。

論文タイトル:Pitching-specific facilitation of upper-limb corticospinal excitability during motor imagery of sports motor skills(スポーツ運動技能の運動イメージング中の上肢皮質脊髄路興奮性の投球特異的促進)

出典: PMC (PubMed Central) – 記事リンク

​この研究では、野球の投手と野球経験のない初心者を対象に、「投球動作をイメージした時」に脳や神経がどう反応するかを実験しました。

​研究の要点

​実験の結果、以下の事実が判明しました。

  1. 投手が投球動作を鮮明にイメージ(運動イメージ)すると、安静時と比べて脳からの神経伝達信号が増大した
  2. ​その反応は、ボールのリリースに重要な親指の筋肉(短母指外転筋)で顕著に見られた。
  3. ​一方で、野球初心者にはこのような反応は見られなかった。
  4. ​さらに、「他者の投球映像を見ながらイメージする(観察+イメージ)」と、単にイメージするだけの場合よりもさらに強い反応が得られた。
  5. ​この反応は上半身(手)特有のものであり、下半身(前脛骨筋など)では優位な変化は見られなかった。

​【解説】分かりやすく言うと…

​専門用語が多く難しく聞こえるかもしれませんが、分かりやすく言うとこういうことです。

「熟練した投手は、ボールを投げずに頭の中でイメージするだけで、実際に投げる時と同じような『動け!』という指令(電気信号)を、脳から指先の筋肉まで送ることができている」

​つまり、体は動いていなくても、脳と神経は「実戦練習」に近い状態を作り出しているということです。

これは単なる気休めではなく、物理的な「神経系のトレーニング」になり得ることを示唆しています。

​考察と応用:この理論をどう現場に活かすか

​この研究結果は、私たち投手の調整法や、スランプ・イップスとの向き合い方に大きなヒントを与えてくれます。

ここからは、論文の内容を踏まえたGrovity Baseballとしての考察と実践法を提案します。

​1. 「投げない練習」の質を高める

​「投球感覚は投げないと養えない」というのは一つの真理ですが、肩肘には消耗品としての側面があり、球数には限界があります。

このジレンマを埋めるのがイメージトレーニングです。

​論文によれば、投球映像を見ながら自分の感覚を重ね合わせることで、神経系を刺激できることが示されています。

つまり、ノースローの日や雨の日であっても、脳内の回路を「投球モード」にして維持することは可能だということです。

実践法: 回復日にただ休むのではなく、自分のベストピッチの映像や、理想とする選手の映像を見ながら、リリースのタイミングや指にかかる感覚をリアルに追体験する。これにより、身体的な負荷をゼロに抑えつつ、技術的な感覚の低下を防ぐ効果が期待できます。

​2. イップス・スランプからの脱出

​私自身の体験談になりますが、大学時代にイップスになり、全くストライクが入らなくなった時期がありました。

しかし、ある時期から「マウンドでひたすらシャドーピッチングをして、ストライクを投げ込む自分を想像する」という練習に没頭した結果、徐々に感覚が戻り、試合に復帰できるまで回復しました。

​当時は藁にもすがる思いでしたが、今回の論文と照らし合わせると理にかなっていたと言えます。

ボールを持っていなくても、正しい軌道とリリースを脳内で鮮明に描くことで、エラーを起こしていた神経回路を、正しい信号が流れる回路へと修正(上書き)できていた可能性があります。

​3. 【重要】「悪いイメージ」も強化される危険性

​ここで一つ、重要な注意点があります。

「イメージした通りに神経へ信号が送られる」ということは、「悪いイメージも体に学習させてしまう」という逆の効果も考えられるからです。

​調子が悪い時、真面目な選手ほど「なぜダメなんだ?」と原因を探そうとして、失敗したシーンや悪い感覚を何度も頭の中でリプレイしてしまいがちです。

この研究のロジックに従えば、失敗のイメージを繰り返すことは、失敗するための神経回路を強化する「悪いトレーニング」になり得ます。

対策: 調子が悪い時こそ、原因探し(悪い映像のリプレイ)はほどほどにして、「過去の最高の1球」の映像を何度も見てください。 「どう直すか」ではなく「どういう感覚が正解だったか」にフォーカスし、良い信号を脳から筋肉へ送り続けること。これが、泥沼から抜け出すための脳科学的な近道かもしれません。

​まとめ

​イメージトレーニングは、決して「妄想」ではありません。

それは「脳から筋肉への神経回路を通す」という、科学的根拠のある具体的なトレーニングです。

  • 映像(観察)とイメージを組み合わせることで効果は最大化する。
  • 指先(リリース)の感覚まで神経を研ぎ澄ませることができる。
  • 悪いイメージのリピートは避け、良いイメージで神経を刺激する。

​体は休まっていても、脳は投げることができます。

限られた球数の中で成長し続けるために、この「イメージトレーニング」を日々のルーティンに組み込んでみる価値はありそうです。

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